春から初夏の箱根の自然を心ゆくまで楽しむことができるおすすめスポットを5つ、厳選してお届けします。
「仙石原すすき草原」では一面の新緑が広がり、「千条の滝」では繊細な水のカーテンが、「箱根湿生花園」では1,700種類もの植物が季節の彩りを添えます。大平台の「しだれ桜通り」では春の桜から初夏のあじさいへと移ろう景色を、「仙元の泉」では箱根が誇る名水を堪能できます。
爽やかな風を感じながら、箱根の春から初夏の魅力を探しに出かけてみませんか。
【特集】新緑の箱根を歩こう
「HAKONEIKU」新緑の箱根を歩こう
春から初夏にかけて、箱根は清々しい新緑に包まれます。萌黄色(もえぎいろ)に芽吹いたばかりの若葉は山々を鮮やかに彩り、清冽な風と共に心を癒す至福のひとときをもたらすことでしょう。
都心から約90分という好アクセスの箱根には、歴史ある温泉街の風情と、四季折々の自然美が調和する散策コースが点在しています。今回は、初夏の箱根の魅力を満喫できる、新緑の散策コースをご紹介します。
春から初夏の箱根の自然を心ゆくまで楽しむことができるおすすめスポットを5つ、厳選してお届けします。
「仙石原すすき草原」では一面の新緑が広がり、「千条の滝」では繊細な水のカーテンが、「箱根湿生花園」では1,700種類もの植物が季節の彩りを添えます。大平台の「しだれ桜通り」では春の桜から初夏のあじさいへと移ろう景色を、「仙元の泉」では箱根が誇る名水を堪能できます。
爽やかな風を感じながら、箱根の春から初夏の魅力を探しに出かけてみませんか。
「仙石原すすき草原」と聞けば秋の景色をイメージする方も多いでしょう。しかし、新緑のみずみずしい景色は、この季節ならではの魅力を秘めています。
「仙石原すすき草原」では、毎年3月に山焼きが行われます。草原全体の植生環境と美しい景観を守るための大切な行事です。
山焼きを終えた草原には、新たな命の芽吹きが訪れます。秋・冬のこがね色の景色が一新され、鮮やかな緑の絨毯へと変わります。青空のもと、遠くに連なる山々を背景に広がる雄大な眺めは圧巻です。
整備された遊歩道をゆっくりと歩けば、心地よい風を感じながら360度のパノラマビューを堪能できます。日中のハイキングはもちろん、日の出や日の入り前後の時間帯もおすすめです。太陽の角度によって刻々と変化する空の色、雲に反射する光と影が織りなすドラマチックな風景は、忘れがたい旅の思い出となることでしょう。
草原周辺には古民家カフェやレストランなどの飲食店も充実しています。散策の途中で一息つくのに最適です。
蛇骨渓谷の上流部、小涌谷の自然に抱かれた「千条の滝(ちすじのたき)」は、水が幾筋もの糸を連ねたように流れ落ちる優美な滝です。
一般的な滝は高所から縦に流れ落ちるのに対し、こちらの滝は横に広がる岩肌を、レース状の水が滑り落ちるように流れています。高さは3メートルと、それほど高さはありませんが、横幅は20メートルにもおよび、まるで女神が衣の袖を広げているかのような幻想的な光景を作り出しています。
滝の周囲にはモミジやカエデをはじめとする木々が生い茂り、初夏には目に染み入るような鮮烈な緑に彩られます。
箱根登山電車「小涌谷駅」から歩いて約20分の道のりは、初心者でも安心のハイキングコースです。滝を分岐点に、箱根浅間山を経て湯坂山から「箱根湯本駅」へと至るコースや、「箱根小涌園 蓬莱園」「岡田美術館」方面に足を伸ばすこともできます。
「箱根湿生花園」は、植物と触れ合える美しい観光スポットです。
湿原、川、湖沼などの水辺に生息する植物を専門に集めた自然豊かな公園として知られています。3万平方メートルの広大な敷地には、四季折々の多様な植物が美しい姿を見せています。
春から初夏は、年間で最も園内が華やぐ季節です。湿原にはサクラソウやカキツバタが色鮮やかに咲き乱れ、高山にはクロユリやミヤマオダマキが可憐な花を咲かせます。
湿生植物に詳しくない方でも、箱根の自然が満喫できるよう工夫されているのも特徴です。散策路は、低地から高地へと自然の遷移をたどるように設計されています。木々が作り出す木漏れ日と、色とりどりの植物群が織りなす景色は、まるで夢の世界のような美しさです。
爽やかな空気とともに散策を楽しめば、豊かな自然の息吹に触れて心身ともにリフレッシュできることでしょう。
売店ではオリジナル葉書や写真集などの小物から、山野草、そして夏季限定で食虫植物なども販売しています。思い出に残る素敵なお土産を見つけてみてはいかがでしょうか。
温泉街として名高い大平台は、しだれ桜の名所としても知られています。「しだれ桜通り」や「箱根登山電車」沿線を中心に、町の各所には約100本のしだれ桜が咲き誇ります。ソメイヨシノよりも遅れて開花する大平台のしだれ桜は、4月上旬から中旬が見頃です。
「しだれ桜通り」は「大平台温泉」の入口から始まり、「子育て阿弥陀堂」へと続く風情ある小径です。両脇には優美な枝振りのしだれ桜が春の彩りを添えています。
良質の水が湧き出る地としても有名で、鎌倉時代に北条家の姫君が化粧水として愛用したと伝わる「姫の水」が湧き出る地としても注目を集めています。
現在は、名水「姫の水」にちなんだ美肌の湯を求めて、多くの観光客で賑わっています。温泉宿のほか、気軽に立ち寄れる共同浴場「姫之湯」も好評で、散策後の心身の疲れを癒すのに最適です。
また、毎年4月16日と17日には地元の「山神神社」で「大平台温泉まつり」が執り行われています。しだれ桜が満開となる頃、干ばつでも枯れることのない湧き水と温泉への感謝を捧げる祭りで、御輿が町内を練り歩きます。
「仙元の泉」では、歴史ある名水を自由に飲むことができます。箱根登山電車「大平台駅」から坂道を数分歩くと、町営駐車場の一角に佇む泉があり、石の臼には清らかな水が注がれています。里山のおもむきを残す大平台ならではの、仙元山のめぐみを受けたまろやかな味わいをご堪能ください。
大平台の町は四季折々の美しい景色が楽しめますが、とりわけ春のしだれ桜と初夏のあじさいは見事です。名水と季節の景色を訪ねて、足を運んでみてはいかがでしょうか。箱根の水と緑が織りなす癒しの空間で、ゆったりとした時間を過ごすことができます。
次からは、森と寄木細工の文化が息づく「畑宿エリア」と、芦ノ湖畔の歴史と絶景を満喫できる「元箱根・箱根町エリア」をご紹介します。
「畑宿」は、かつて「天下の険」と呼ばれた箱根越えの中間地点として、旅人たちが足を休めた場所です。寄木細工のほか、「飛龍の滝」をはじめとした散策スポットなど、日々表情を変える豊かな緑に囲まれた、森とともに暮らしが息づく魅力あふれるエリアです。
「畑宿一里塚」は、江戸時代の「箱根八里」の面影を現代に伝える貴重な史跡です。
一里塚とは、江戸時代の道しるべのことです。日本橋を起点として、街道沿いに一里(約4キロメートル)ごとに設置され、旅人たちの行程の目安や休憩場所として賑わいを見せました。
「畑宿一里塚」は、旧街道東坂(湯本~箱根町)のほぼ中央に位置し、日本橋から23里目の道しるべです。1998年の復元工事では、直径約9メートルの円形の石組みに土を盛り上げ、江戸時代の風景を忠実に再現しています。
この一里塚からは、箱根山の奥深くまで旧街道の石畳が続きます。往時、一里塚の脇には旅籠や茶屋が軒を連ね、旅人たちはここで足を休めてから、石畳の続く箱根山の奥へと歩みを進めた姿が目に浮かびます。
「畑宿夫婦桜」は、芦之湯へと向かうハイキングコース「飛龍の滝 自然探勝歩道」に佇む一対のヤマザクラです。
畑宿から出立してしばらく歩くと、やがて夫婦桜の姿が現れます。寄り添うように立つ夫婦桜は、樹齢100年から150年といわれ、長年連れ添った仲睦まじい夫婦の姿を彷彿とさせます。また、この桜は2本の木が根元で一つにつながっている「連理の桜」と呼ばれる姿をしています。夫婦桜同様、夫婦円満を象徴する木として、地元の人々や観光客から愛されてきました。「畑宿夫婦桜」の見頃は、4月中旬ごろです。
その木陰で一休みすれば、周囲の連なる山々や若葉の緑が目に優しく映り、爽やかな風が頬を撫でて心地よい涼をもたらすことでしょう。
夫婦桜を眺めながら「飛龍の滝 自然探勝歩道」をさらに進むと、壮大な「飛龍の滝」が目の前に姿を現します。
上段15メートル、下段25メートルの二段に分かれて豪快に流れ落ちる様子は、まさに龍が天空へと飛翔するかのようです。その雄大な姿にちなんで「飛龍の滝」と名付けられたと伝えられています。
この場所は、かつて箱根権現を信仰する行者たちが滝行を行い身を清めた聖地だったことからも、今もなお神秘的な雰囲気を漂わせ、高所から二段に分かれて流れ落ちる水しぶきと新緑が織りなす景観は見る者の心を打ちます。
山道から滝へと至る斜面には「柱状節理(ちゅうじょうせつり)」と呼ばれる岩が広がります。これは溶岩が冷えて急速に縮む際に形成された、5角形や6角形の柱状の割れ目が集まった岩です。太古の火山噴火の痕跡を残すこれらの岩々からは、今なお地球の息吹が感じられるような荒々しさが漂います。
「飛龍の滝 自然探勝歩道」は江戸時代から街道として使われてきた由緒ある道です。畑宿と芦之湯温泉を結ぶ近道として「滝坂道」の愛称でも親しまれています。
元箱根・箱根町エリアでは、芦ノ湖畔の「箱根神社」や関所跡など、歴史的なスポットを巡りつつ、水辺の散策を楽しめます。雄大な富士山を望む絶景と、豊かな緑に包まれるこの季節ならではの潤いを感じながら、先人たちの足跡に想いを馳せるひとときも、このエリアの魅力を深めてくれるでしょう。
元箱根から箱根町へと続く箱根旧街道沿いの杉並木は、江戸時代に徳川幕府が街道整備のために植えたものです。旧街道最大の難所とされた箱根の道に植樹され、約370年もの間、旅人たちを日差しや風雪から守り続けてきました。
芦ノ湖畔に沿って進む街道の両脇には、幹回り4メートルにもおよぶ杉の大木が天を突くように連なり、壮観な眺めと清々しい気配を放っています。
江戸時代の街道の並木には、松が植えられるのが一般的でした。しかしこの旧街道では、箱根の冷涼で湿潤な気候に適した樹木として、当初の松の計画から杉に植え替えられたといわれています。
かつては湯本から畑宿、元箱根、箱根町、箱根峠を経て三島まで続く旧東海道全域に杉並木が植えられていましたが、現在ではこの付近だけにわずか400本の杉が残されています。
樹齢300年余の大杉は、長い年月を経て今の姿を形作ってきたのでしょう。真っすぐに天へと向かってそびえる杉並木からは、箱根の深い歴史が伝わります。
「恩賜箱根公園」は、かつての「箱根離宮」跡地を整備した神奈川県立公園です。この離宮は明治時代に建てられた皇室の別邸で、皇族の避暑や外国の要人をもてなすための施設でした。
芦ノ湖に突き出た半島状の広大な敷地からは、芦ノ湖、富士山、そして箱根外輪山を一望できます。素晴らしい眺望は「かながわ景勝50選」や「関東の富士見百景」にも選ばれています。
中央広場に位置する洋館「湖畔展望館」は、かつての離宮の面影を今に伝えています。2階の展望バルコニーから広がる壮大なパノラマは、往時の「箱根離宮」の優雅さを感じさせます。
手入れの行き届いた庭園も見どころの一つです。特に春から初夏にかけては、さまざまな花々が咲き誇り、色鮮やかな花びらと緑のコントラストが見事な景観を生み出します。
園内には富士山と芦ノ湖の絶景が広がる「弁天の鼻展望台」や、苔むした石段が緑の中にひっそりと佇む「二百階段」、芦ノ湖を巡る「湖畔路(自然探勝路)」、富士山を眺めながらティータイムを楽しめる茶処「緑賜庵(りょくしあん)」など、多彩な見どころが用意されています。
新緑シーズンの箱根は、訪れる人々に深い安らぎをもたらします。澄んだ空気と若葉の爽やかな香り、せせらぎの音が響く山道は、日常の喧騒から解き放たれる特別な時間となることでしょう。
それぞれの場所で異なる表情を見せる新緑は、何度訪れても新鮮な発見に満ちています。大人の休日にふさわしい上質な癒しを求めて、箱根を訪れてみてはいかがでしょうか。
ゆっくりと散策しながら、木々の間から差し込む木漏れ日を浴び、自然の移ろいを楽しむ至福のひとときをお過ごしください。箱根の新緑散策は、忙しい日々を過ごす私たちに、かけがえのない癒しのひとときを与えてくれるに違いありません。