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第6回:苦難の急勾配・峠越え。―鉄道マンの戦いに迫る―


山国である日本は、古くから街道の途中に『峠』が登場しました。旅人は急な山道を上り、下ることによって次の目的地に行くことができたのです。これは鉄道も同じで、路線を開設するのに避けては通れない『峠』や『急勾配』が存在しました。今回のコラムではその『峠』や『急勾配』を越えるためのさまざまな技術について、またいくつかの『峠』や『急勾配』をピックアップしてご紹介します。



鉄道の『峠』といえばここ! ―①碓氷峠―

鉄道は鉄の線路を鉄の車輪で走ります。大きく重い車両をなるべく摩擦がなく惰性で走ることができるよう、車輪の表面はつるつるに近い状態で維持されています。そのため摩擦が少ない分平坦な線路は良いのですが、勾配には強くありませんでした。一般的には30パーミル(30/1000⇒1000m走るごとに30m上る)でもかなりの勾配線区となるかと思います。しかしこれから紹介する旧信越本線の碓氷峠は国鉄(JR)の中で最も急勾配の線区で有名で、国鉄のさまざまな鉄道マンがこの難関を突破するのに技術を結集してきました。
碓氷峠は群馬県安中市と長野県北佐久郡軽井沢町との境付近にあります。古代より関東地方と中部地方の交通に用いられてきました。江戸時代には江戸を起点とした主要街道である五街道のひとつ「中山道」のルート上でもあることから峠前後の集落は宿場町として栄えていました。明治時代になると東京と新潟を結ぶルートである信越本線として鉄道の敷設が始まりました。1885年~1888年にかけて高崎~直江津間の路線に着工しましたが、碓氷峠を含む横川~軽井沢間は工事が難航し、1893年までは馬車鉄道として営業を行っていました。1893年に横川~軽井沢間が開通しましたが、当時の技術では最大66.7パーミルの急勾配区間を上るには通常の車輪とレールを用いる方式(粘着式)では運行が困難でした。そのため、通常の2本のレールの間に溝のついたレールを別に敷き、車両側の歯車と噛み合わせる方式(アプト式)を採用することで運行できるようになりました。開業当時は蒸気機関車による運行でしたが、トンネルの連続する区間においては機関車より生じる煙(煤煙)による乗務員や乗客への負担が重く、また高速化を図るためにも1912年には早くも電化が行われ、電気機関車による運行となりました。

碓氷峠

▲アプト式は歯車を噛み合わせて峠を上っていく(写真は大井川鉄道のアプト式レール)

1950年代以降の高度成長期に入ると鉄道による輸送量は大きく増加し、さらなる輸送力の増強が求められるようになりました。この頃には鉄道技術も大きく進歩し、上述の粘着式による運行が可能となったことから、以下の内容の改修工事が行われました。
・別ルートに単線の新線を建設し複線にする
・従来ルートのカーブ区間などの改修工事
・新開発の電気機関車を投入
1961年~66年にかけての工事により高速化が図られ、1列車あたりの輸送量の拡大がなされました。
また横川駅前で営業を行っていた「おぎのや」が1958年に『峠の釜めし』を販売開始。今日まで続く人気の駅弁となりました。

おぎのや

▲今でも絶大な人気を誇る「おぎのや」の『峠の釜めし』

1997年の北陸新幹線(高崎~長野間)開業により横川~軽井沢間は廃止となり、現在はバス路線による運行となっています。横川駅隣にあった横川運転区跡地は「碓氷峠鉄道文化むら」として整備され、碓氷峠に関する歴史、資料の紹介、鉄道車両展示などが行われています。また、廃線跡を利用した電気機関車の体験運転やトロッコ列車の運行なども楽しめます。
この他に、横川駅~旧熊ノ平駅間の廃線跡の一部が遊歩道「アプトの道」として整備されており、今でも廃線跡を歩くことができます。

碓氷峠

▲「峠のシェルパ」と呼ばれたEF63型電気機関車を2機つなげて列車を押し上げた(写真は「碓氷峠鉄道文化むら」内)

碓氷峠

▲通称「めがね橋」こと碓氷第三橋梁、碓氷峠の最大の遺産です

碓氷峠

▲電化工事の際に造られた「丸山変電所」。現在の姿は2002年の復元化で遺構として整備された

奥羽本線最大の難所! ―②板谷峠―

板谷峠は福島県福島市と山形県米沢市の境付近にあります。江戸時代には米沢街道(板谷街道)として福島県福島市と山形県上山市を結ぶルートして利用されていました。碓氷峠は道路、鉄道共に同じ名称ですが、こちらのルートは道路としては栗子峠、鉄道としては板谷峠という名称のほうがみなさんに馴染みが深いと思います。
この地に鉄道が敷設されたのは1899年、東京~青森を結ぶルートである奥羽本線として開通しました。急勾配区間となる庭坂~関根間は勾配こそ最大38パーミルではありますが、距離は碓氷峠の約2倍となる22㎞と長く、鉄道マン泣かせの難所でありました。ここは碓氷峠のようなアプト式ではなく、通常の粘着式での建設が行われましたが、勾配区間中に設けられた4駅については対策としてスイッチバック方式の駅となっています。
また庭坂~赤岩間は急勾配を避けるため3度のルート変更、工事が行われています。開業から10年あまりの1910年には、現在の赤岩駅付近において大雨によるトンネル崩落が発生。それまでのルートを放棄し、新ルートを建設の上翌1911年に復旧しました。1960年には設備が老朽化した前記ルートに代わり新ルートを建設、更に1967年にはそのルートの複線化も行われています。
また、この板谷峠を中心とした区間が奥羽本線内で最も早く電化工事を開始し、1949年に福島~米沢間で直流電化の後、1963年に交流化されています。この区間専用に設計された電気機関車が配置され、客車列車はもちろん気動車列車にも峠越えの補助として使用されました。

板谷峠

▲懐かしい『峠駅』。急勾配専用!!力持ちのEF71の出番です。(撮影:1975年)

板谷峠

▲板谷峠は38パーミルという急勾配!しかもこれが碓氷峠の2倍も続く(撮影:1975年)

平成に入り、福島~山形間は日本初のミニ新幹線方式(従来の線路設備を改良し、新幹線区間と直通運転をする)による高速化が始まりました。1992年に運転が開始され新幹線車両はもちろん、普通列車も新型車両の投入によりスイッチバックの必要はなくなり、スイッチバックは廃止されました。現在の山形新幹線は福島~米沢間はノンストップで走り抜けますので、急勾配区間を感じることは少なくなりました。
途中駅の峠駅には現在も名物の「峠の力餅」の販売が行われています。日中の普通列車の到着に合わせ今では珍しくなった立ち売り風景を見ることができます。新幹線内の車内販売でも購入は可能ですがホームでは買えません!、一度体験してみてはいかがでしょうか。

板谷峠

▲今では板谷峠を難なく越えていく山形新幹線

山陽本線の『急勾配』区間と言えば! ―③瀬野八越え―

瀬野八とは峠の名称というわけではなく、広島県東広島市から広島市安芸区にかけて走行する急勾配区間の山陽本線八本松駅 - 瀬野駅間の地名からきている愛称です。勾配は最大22.6パーミル、距離は10.6㎞です。当時の山陽鉄道によりこの区間は1894年に開通していますが、現在に至るまでルートの変更などは特に行われておらず、開通時の線形のままとなっています。車両性能が不足していた時代はこの区間を通過する各列車(瀬野駅から八本松駅方面への上り列車)に登坂を補助するための機関車(補機)を連結していました。蒸気機関車による運行から1962年の電化により電車や電気機関車が走行可能となりますが、1970年代ごろまでは旅客列車においても補機を連結する列車が存在していました。現在も貨物列車では補機を連結しています。

この『急勾配』区間の大きな特徴となっていたのが走行中に行う補機の切り離しです。優等列車や高速貨物列車は速達性を求められますので、機関車の連結、切り離しに要する時間はその分速達性を損なってしまいます。そこで、登坂を終えた後の機関車を走行中に八本松駅付近で切り離す作業が2002年まで行われおり、補機として使用される機関車は連結器に改造を施された専用の機関車が用いられていました。
全国各地ではルート変更や新型車両の投入、貨物列車の廃止などが進み、峠越えならではの風景がなくなりつつありますが、この区間については当面の間運行形態に変化はないと思われます。

瀬野八

▲現在の補助機関車(補機)の主役、EF210(写真は『瀬野八』ではない路線で撮影し、一部型番が異なります)

身近な『急勾配』、登山電車と言えば! ―④箱根登山鉄道―

箱根登山鉄道は会社名で、正式には「箱根登山鉄道鉄道線」といいます。通称では「登山電車」などの呼び名で親しまれている、日本で唯一と言って良い本格的な登山鉄道です。線路幅は新幹線と同じ1435mmと広いですが、車両が短く小さいのは急カーブがあるため、長い車両では曲がりきれないためです。
箱根といえば【登山電車】というくらい有名で観光客にも親しまれています。箱根湯本駅から強羅駅までほとんどの駅が温泉地や観光スポットになっており、神奈川県を走る鉄道路線では乗客のほとんどが観光目的で利用する電車といえます。
日本の粘着式の鉄道では最急勾配を走る電車で、80パーミル(※注)という急勾配や半径30mという急カーブもあります。そのため沿線には3ヵ所のスイッチバックがあり、ここで車両の向きを変えてジグザグに登ります。あまりに勾配がきついため、他線では無いこととしてスリップ防止と線路の磨耗を防ぐために線路に水を撒きながら走っています。
箱根湯本駅を過ぎると緩傾斜の助走区間などなく、いきなり急勾配になります。車内のつり革が傾くのでよくわかります。
箱根登山鉄道は沿線の風景も美しく、ゆっくりと走るので車窓の景色ものんびりと楽しめます。箱根へ来るなら車ではなく電車を利用して、この急勾配を体験してみてください。一度乗れば必ずファンになるかと思います。
(※注)80パーミルの急勾配とは長さ15mの3両編成車両(約45m)で先頭と後ろの高さが約3.6mも違ってきます。これは普通の鉄道では考えられない本当の『急勾配』です。

箱根登山

▲2つ目のスイッチバック方式地点は「大平台駅」

箱根登山

▲散水により線路との摩擦を軽減し走行する

箱根登山

▲80パーミルという急勾配が続きます

箱根登山

▲連続する急勾配をゆっくりと登っていく

これからの急勾配・峠越えは ―路線・技術の進歩―

急勾配・峠越えは、さまざまな歴史を作ってきましたが、技術の進歩に伴い牽引・推進力が増強され、難なく超えることができるようになってきました。
合わせて、新幹線の整備が進められ、勾配を緩やかにした高速鉄道がトンネルをくり抜いて、「越えていく」時代から「通り抜ける」時代へと変わってきています。
モクモクと煙を吐き、ゆっくり『峠を上っていく』。ディーゼルエンジンの唸りを上げながら『急勾配を駆け上がる』。今のうちにぜひ体験しに行ってみませんか。

北陸新幹線

▲北陸新幹線は碓氷峠を、トンネルでいとも簡単に抜けていく

荒川 将人
株式会社 小田急トラベル国内旅行部
「家族で楽しい鉄道旅♪♪」鉄道ファン以外のご家族連れの方にも楽しんで頂けるツアーを、今後も企画していきます。

※ページ内の画像はすべてイメージです。

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